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「…しゅ、出立の…ご挨拶ではないかと」
歯切れ悪く答えた。
「されど、父上様と共に上洛なされる母上様はともかく、お祖母様は城に残られるのであろう?」
「…それは」
「そなた、昨夜 母上様の座所へ呼ばれたのであろう? 何か申されていなかったのですか?」
お菜津は「えっ」となり、目を白黒させながら、気まずそうに視線を膝の上に落とした。にもな訳知り顔のお菜津に、胡蝶はしげな表情を向けていると
「──胡蝶、入りますよ」
入側の横から黒い影が伸び、開け放たれた御居間の入口の前に、濃姫と報春院が姿を現した。
お菜津はサッと脇に退いて、深々と平伏する。【脫髮先兆】造成頭髮稀疏5大原因 & 生髮方法推薦! -
胡蝶はすぐに笑顔を作って
「母上様、お祖母様、ようおで下さいました。ご一緒におしとは実にお珍しい」
と挨拶を述べるや否や、濃姫と報春院は速やかに入室して
「──閉めよ」
お菜津や、従えてきた古沍に命じて、開け放たれていた戸襖や障子を、全て閉じさせた。
急なことに胡蝶は一驚する。
薄暗くなった部屋の中で、胡蝶がおろおろと母や祖母の姿を見つめていると
「胡蝶、そちらへ控えよ」
濃姫はチラと部屋の上座に目をやった。
胡蝶は戸惑いながらも「…はい」とづくと、言われた通り上座に控え直し、
濃姫と報春院は、黙ってその御前に膝を折った。
鉛のように冷たく重苦しい空気が、数秒、対座する三人の間に流れた。
胡蝶は上目遣いになりながら、両者の顔を交互に眺めていると
「胡蝶──」
ふいに濃姫が口火を切った。
胡蝶は反射的に背筋を伸ばし「…はい」と、軽く頷いた。
「そなたに、大事な話があって参りました」
「大事な話…?」
「今から申すことは、私と、齋に古沍。そして、お菜津のみが知っている話じゃ」
濃姫は背後の障子に映る、お菜津の影をして言った。
「上様にもお伝えしていない、我らのみが知っていること故、決して他言せぬように」
「父上様も知らぬこと……。いったい、どのようなお話にございますか?」
胡蝶がくと、報春院は神妙な面持ちになって
「そなたには、か受け入れ難い話やも知れぬ故、覚悟してお聞きなされ」
と、どこか言いめるような語調で告げた。
胡蝶は眉間に皺を刻むと、静かに濃姫の方へ顔を向ける。
「…いったい…、どのような?」
濃姫は報春院と顔を見合わせると、深くひと息、意を決したように告げた。
「胡蝶。そなたにはこれより───」
四つ半刻(午前11時頃)。
織田信長は、上洛及び、中国戦線へくべく安土城を発った。
『 戦陣の用意をして待機。命令があり次第出陣せよ 』
との信長の命令があった為、城は本丸の御留守居衆と、二の丸の御番衆に任され、
信長本人は、森兄弟を始めとする御小姓たち二、三十名を従えただけの出立であった。
蘭丸が胡蝶に話したように、実に身軽な出発となった訳だが、
小姓衆の周囲には警固の武士たちも従っており、それらを含めると行列は百名近かった。
そんな行列の中程に、濃姫を乗せた輿が密やかに存在した。
信長の正室にふさわしい