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一方 報春院を送り出した濃姫は、居間の上座で茶を啜りながら、煩悶(はんもん)の表情を浮かべていた。
茶を一口啜っては溜め息を吐き、また一口啜っては溜め息を吐く。
そんな動作を繰り返す濃姫を、三保野が傍らから不安気な面持ちで見守っている。
「…あの、姫様」
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「畏れながら、先程の大方様との一件をお気に病んでおられるのでしたら、どうぞお忘れなさいませ。
姫様の申された通り、ご嫡男であられる信長様が、織田家の家督を継がれるのが世の道理なのですから」
三保野が気遣いがちに言うと、濃姫は軽く微笑んで首を振った。
「そうではない。確かに義母上様に殿の事をご理解していただけなかったのは残念じゃが、気に病んではおらぬ」
「では、先程からいったい何を悩んでおられるのです?」
「殿の事じゃ」
「信長様…?」
「殿が何故にあのような愚行に及んだのか、考えても考えても、その理由が分からぬのじゃ」
「大殿様のご葬儀の折のことを申されているのですね?」
「ええ…。義母上様にはああ申したが、私も未だに、殿のお振る舞いの意図が掴みきれていないのです。
あの殿のこと故、あれほどの大胆な行動の裏には、何かしらのお考えがあるような気はするのじゃが」
濃姫は湯呑みを一旦下に置き、より深く考えを巡らせてみた。
例えば、信長はあえて一同の前でうつけのような振る舞いをする事で、敵方を油断させようと企らんだのかもしれない。
または、此度の信秀逝去の報を受けて『尾張を奪い取る絶好の機会』と考える邪な者共が、
故人を悼むはずの葬儀の場に平然と顔を出している有り様を見て“茶番”だと思ったのか。
はたまた単純に、慕っていた父の死を受け止め切れず、悲しみをあのような形でぶつけたのか…。
理由は色々と思い付くのだが、どうにも“これ”というものが見付からない。
濃姫は脇息に肩肘を乗せ、悩ましげな表情で頬杖をついた。
「──失礼致します」
するとそこへ、濃姫付きの侍女が居間のとっつきに現れて
「お方様、急ぎお出迎えを。殿のお成りにございます」
と平伏の姿勢で申し伝えた。
「ま、殿が?」
濃姫が思わず聞き返すと
「濃…!邪魔をするぞ!」
荒々しい足音を響かせながら、信長が居間の中に入って来た。
濃姫は素早く上座の脇に退くと、打掛の裾を背に広げ、恭しく三つ指をついた。
「これは殿…本日はまた突然のお越しで」
「儂の突然はいつもの事じゃ。今更珍しくもあるまい」
そう言いながら、信長は上座へと進み、金欄縁取りの茵の上に腰を落とした。
「お濃、本日はそなたに頼みがあって参った」
「私に?」
「ああ。実はそちの持っている…」
言いかける信長の目に、部屋の隅に控えている三保野の姿が映る。
「悪いがお濃と二人きりで話がある、そちは下がっておれ」
「…は、はい」
三保野は慌てて一礼を垂れると、命じられるがまま部屋を辞した。
「まぁ、いったい何なのです? 人がいては話せぬような頼み事なのですか?」
「いや、別にそういう訳ではないのだが──。 そなた、今もあれを持っておるか?」
「あれ、と仰いますと」